芥川龍之介に『点心』という随筆がある。
この中で江戸前期の俳人・池西言水の俳句が紹介されている。言水の此れら俳句を芥川はこう評している。
『言水の特色は何かと言へば、それは万人が知らぬ一種の鬼気を盛り込んだ手際にある思ふ。』
と。芥川が紹介している其の言水の句を以下に引用しよう。
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「「姨(をば)捨てん湯婆(たんぽ)に燗(かん)せ星月夜」
「黒塚や局女(つぼねをんな)のわく火鉢」
「御忌(ぎょき)の鐘皿割る罪や暁(あけ)の雲」
「つま猫の胸の火や行く潦(にはたづみ)」
「夜桜に怪しやひとり須磨の蜑(あま)」
「蚊柱(かばしら)の礎(いしずえ)となる捨子(すてご)かな」
「人魂(ひとだま)は消えて梢(こずえ)の灯籠(とうろ)かな」
「あさましや虫なく中に尼ひとり」
「火の影や人にて凄き網代守(あじろもり)」
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私が此れらの言水に惹かれるのは、芥川が指摘しているように『(句の中に)漂う不気味さ』である。怪談好きの私にとっては、此れらの池西言水の句を此のトピックに挙げなければならない。
なお、芥川の『芭蕉雑記』という随筆の最後の章に、芭蕉の俳句の『鬼趣』について書かれている。私には此れも大変興味深い。興味ある方は読まれるとよい。
ここに其れらを全て引用できないのは残念であるが、芭蕉の『鬼趣』がいかなるものか二つほど引用しよう。
「 骸骨の画(え)に
夕風や盆桃灯(ぼんぢょうちん)も糊(のり)ばなれ
本間主馬(しゅめ)が宅に、骸骨どもの笛、鼓をかまへて
能する所を画(えが)きて、壁に掛けたり(以下略)
稲妻(いなずま)やかほのところが薄(すすき)の穂 」